子どもとの関係がうまくいかない。
思春期の子どもに、どう接したらいいのかわからない。
子どもが学校に行き渋ったり、不登校になったりすると、親として心配や不安が大きくなるものです。
「何とかしてあげたい」
「このままではいけない」
「どうしたら元気になってくれるのだろう」
そんな思いから、つい子どもにあれこれ口を出してしまうことはありませんか?
実は、私自身も子どもが中学生の頃、親子関係に悩んだ経験があります。
当時の私は、子どもを心配するあまり、子どもの気持ちや行動にまで踏み込み、思いどおりに動かそうとしていました。
そんな私が、親子関係を振り返るきっかけになったのが、「バウンダリー(境界線)」という考え方でした。
この記事では、私自身の経験を交えながら、親子関係におけるバウンダリーの大切さについてお伝えします。
1.子どもを心配するあまり、何でも先回りしていた
子どもが中学生の頃、学校への行き渋りが始まり、体調不良も続くようになりました。
それまでの私は、子どもを自分の分身のように感じ、あれこれと世話を焼いていました。
「こうすればいいのよ」
「早く〇〇しなさい」
「もう〇〇はやったの?」
子ども自身が考えたり、決めたりすることにも、親の私が先回りして口を出していたのです。
今振り返ると、子どものためを思っての行動でしたが、子どもが自分で考え、行動する機会を奪っていた面もあったと思います。
本当なら、子ども自身が考えて、やってみる。
たとえ失敗しても、その経験から学んでいく。
うまくいけば、自分でできたという喜びや自信につながっていく。
それは、子どもが成長していくうえで大切な経験です。
けれども当時の私は、子どもが失敗することが怖くてたまりませんでした。
子どもが困らないように。
傷つかないように。
失敗しないように。
先回りして、あれこれと意見を伝えていました。
「こうしたほうがいいんじゃない?」
という程度ならまだしも、いつの間にか命令するような口調になり、子どもをコントロールしようとしていたのです。
子どものことを考え、心配し、どうしたらいいかを考える。
自分の人生だけでなく、子どもの人生まで、私が何とかしなければいけないように感じていました。
忙しいし、苦しい。
そんな感覚もありました。
けれども、その苦しさの中に、自分が何を抱えていたのか、当時は十分に気づいていませんでした。
2.「バウンダリー(境界線)」という考え方との出会い
子どもの行き渋りや体調不良をきっかけに、私は本やインターネットの記事を読みあさるようになりました。
どうすれば子どもが元気になるのか。
どうすれば親子関係がよくなるのか。
そんなことを必死に探していたときに出会ったのが、「バウンダリー(境界線)」という言葉でした。
バウンダリーとは、自分と他者との間にある心理的な境界線のことです。
自分と相手は、それぞれ異なる気持ちや考え、価値観を持った存在です。
相手を大切にしながらも、自分と相手を区別し、お互いの気持ちや意思を尊重するための考え方です。
境界線は目に見えるものではありません。
けれども、人との関係に大きな影響を与えます。
たとえば、
相手が自分とは違う意見を持っていても、その違いを認めること。
相手が自分で決めるべきことを、相手に任せること。
相手の感情と自分の感情を区別すること。
こうした関わり方も、バウンダリーを意識することにつながります。
もちろん、相手を放っておくことや、何も助けないことが境界線を守るという意味ではありません。
必要なときには支え、助けを求められたら一緒に考える。
その一方で、相手が自分で考え、決める余地も大切にする。
そのような関わり方を目指していくことができます。
3.親子であっても、自分とは違う人格を持つ他者
親と子どもは、深いつながりのある関係です。
だからこそ、子どものことを自分のことのように感じ、心配になるのかもしれません。
けれども、親と子どもは別々の人格を持った存在です。
子どもには子どもの気持ちがあり、考えがあり、自分で決めていく人生があります。
特に思春期は、親から少しずつ心の自立を進め、自分なりの考えや価値観を育てていく時期です。
親がよかれと思って伝えたことでも、子どもにとっては、口出しされた、信頼されていない、自分の気持ちをわかってもらえない、と感じられることがあります。
親が子どもを心配すること自体は、悪いことではありません。
大切なのは、心配だからといって、子どもの考えや行動をすべて親が決めようとしていないか、ということです。
子どもには子どもの人生があり、親には親自身の人生があります。
その違いを認めることが、親子関係を見直す第一歩になるのではないでしょうか。
4.子どもをコントロールしたくなる自分の気持ちに気づく
バウンダリーについて知り、心理学を学ぶなかで、私は自分自身の気持ちを振り返るようになりました。
どうして、私はこんなにも子どもに口を出したくなるのだろう。
どうして、子どもが自分の思いどおりに動かないと、こんなにも苦しくなるのだろう。
そうやって自分の内面を見つめていくと、子どもを心配する不安や、どうなってしまうのだろうという恐怖、そして、私の話を聞き入れてもらえない悲しみがあることに気づきました。
私は、子どものために何とかしようとしていたつもりでした。
けれども、その行動の背景には、自分自身が不安や恐怖を感じたくない、という気持ちもあったのです。
子どもを自分の思いどおりに動かすことができれば、少しは安心できる。
そんな思いが、知らず知らずのうちに働いていたのかもしれません。
けれども、子どもがどうなるのかという不安を、子どもをコントロールすることで解消しようとしても、根本的な解決にはなりません。
私の不安は、私自身の気持ちです。
子どもが私の言うことを聞いてくれない悲しみも、私の気持ちです。
それらを子どもに何とかしてもらおうとするのではなく、まず自分の気持ちとして受け止めていく必要がありました。
子どもを変えようとする前に、自分の内側にある不安や恐怖に気づき、向き合っていく。
私にとって、それは親子関係を変えていくための大切な一歩でした。
5.バウンダリーを意識すると、親子関係は少しずつ変わっていく
自分と子どもは違う存在なのだと頭では理解していても、実際の行動に移すことは簡単ではありませんでした。
心配になれば、つい口を出したくなる。
子どもが困っているように見えると、何とかしてあげたくなる。
そんな自分が、すぐに変わったわけではありません。
それでも、バウンダリーを意識しながら、少しずつ子どもとの関わり方を見直していきました。
子どもが自分で考える時間を持つこと。
すぐに答えを与えず、子どもの気持ちを聴くこと。
子どもの選択と、自分の不安を分けて考えること。
そして、自分が不安になったときには、子どもを動かそうとする前に、自分の気持ちに目を向けること。
そうした小さな変化を重ねるなかで、親子関係も少しずつ変わっていきました。
「自分と他者は違う」
言葉にすれば当たり前のことなのに、行動で表すのは難しいものです。
特に、大切なわが子との関係では、その違いを受け入れることが難しくなることもあります。
けれども、親が自分の気持ちに気づき、子どもとの間に適切な境界線を意識することで、関わり方を変えていくことはできます。
親がすべてを背負わなくてもいい。
子どもの人生を、親がすべて引き受けなくてもいい。
子どもを大切に思う気持ちと、子ども自身の力を信じて見守ることは、両立できるのです。
6.子どもとの間に、一本の線を引いてみる
もし今、子どもとの関係に悩んでいるなら、少し立ち止まって考えてみてください。
- 私は、子どもが自分で決めることまで、先回りして決めていないだろうか。
- 子どもが自分の思いどおりに動かないとき、私はどんな気持ちになるだろう。
- 子どもの問題だと思っていることの中に、私自身の不安や恐怖が隠れていないだろうか。
- 子どもの気持ちを聴く前に、自分の考えを伝えようとしていないだろうか。
すべてに答えを出す必要はありません。
まずは、自分がどんな気持ちで子どもと関わっているのかに気づくことから始めてみましょう。
バウンダリーを意識することは、子どもとの間に冷たい壁をつくることではありません。
お互いを一人の人間として尊重し、必要なときには支え合いながら、それぞれの人生を大切にすることです。
子どもを大切にすることと、自分自身を大切にすること。
その両方を大切にできる関係を、少しずつ育てていけたらと思います。
もし、一人で考えていると同じ悩みを繰り返してしまうなら、第三者と一緒に気持ちや関わり方を整理してみることも、一つの方法です。
自分の気持ちに気づくことから、親子関係が変わり始めることもあります。
このことは実は自分自身と親やパートナー、そして友人との関係でも当てはまるのです。
そのあたりのことも次回以降書いていきますね。
